原告は、特願2020-543021にかかる国際出願についての国内書面の発明者の氏名として「ダバス、本発明を自律的に発明した人工知能」と記載しており、特許庁長官から発明者の氏名として自然人の氏名を記載するように補正命令が下っていましたが、原告は補正をしなかったために出願却下となり、この出願却下に対して取り消しを求め東京地方裁判所に訴訟を提起していたものです。争点は、特許法にいう「発明」とは、自然人によるものに限られるかどうかです。
 裁判所の判断では、「発明をした者」は、特許を受ける権利の帰属主体にはなり得ないAIではなく、自然人をいうものと解するのが相当、
「発明者」にAIが含まれると解した場合には、いずれの者を発明者とすべきか法令上の根拠を欠く、自然人が想定されていた「当業者」という概念を、直ちにAIにも適用するのは相当ではない、
AIの自律的創作能力と、自然人の創作能力との相違に鑑みると、AI発明に係る権利の存続期間は、AIがもたらす社会経済構造等の変化を踏まえた産業政策上の観点から、現行特許法による存続期間とは異なるものと制度設計する余地も、十分にあり得るといえ、
AI発明に係る制度設計は、AIがもたらす社会経済構造等の変化を踏まえ、国民的議論による民主主義的なプロセスに委ねることとし、その他のAI関連制度との調和にも照らし、体系的かつ合理的な仕組みの在り方を立法論として幅広く検討して決めることが、相応しい解決の在り方とみるのが相当であると述べています。
 なお、原告の主張内容及び弁論の全趣旨に鑑みると、まずは我が国で立法論としてAI発明に関する検討を行って可及的速やかにその結論を得ることが、AI発明に関する産業政策上の重要性に鑑み、特に期待されているものであることについても言及しています。(弁理士 井上 正)