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複数主体の問題

 クライアント・コンピュータとサーバ・コンピュータとから構成されるコンピュータ・システムのように複数の主体で発明が実施される場合の問題に関する裁判例です。

複数主体 IOT特許(日本)

 ①HOYA事件 平成16年(ワ)第25576号

 HOYA事件において問題となったクレームは次の通りです。

 【F】ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注側に設置された少なくともヤゲン情報を送信する機能を備えたコンピュータと、この発注側コンピュータに情報交換可能に通信回線で接続された製造側コンピュータと、この発注側コンピュータへ接続された3 次元的眼鏡枠測定装置とを有する、製造側において手元に眼鏡フレームがない状態でヤゲン加工が行われるヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システムであって、

 【G】前記発注側コンピュータは、眼鏡レンズ情報、3 次元的眼鏡枠形状情報を含む眼鏡枠情報、処方値、及びレイアウト情報を含めた枠入れ加工をする上で必要となる情報を入力し、発注に必要なデータを前記製造側コンピュータへ送信する処理を含む眼鏡レンズの発注機能を有し、

 【H】一方、前記製造側コンピュータは、前記発注側コンピュータからの送信に応じて演算処理を行い、ヤゲン加工済眼鏡レンズの受注に必要な処理を行う機能を備え、

 【I】前記眼鏡枠情報は、前記3 次元的眼鏡枠測定装置の測定子を前記眼鏡枠の形状に従って3次元的に移動し、所定の角度毎に前記測定子の移動量を検出して前記眼鏡枠の3 次元の枠データ(Rn、θ n、Zn)を採取して得たものであり、

 【J】前記発注側コンピュータは、前記3 次元の枠データに基づいて、この3次元の座標値から算出された前記眼鏡枠のレンズ枠の周長、眼鏡の正面方向に垂直な平面に対して左右の各眼鏡枠が同一の傾きをなすものとして定義される該傾きの角度である眼鏡枠の傾きTILT、及びフレームPD を求め、これらを前記製造側コンピュータへ送信すること

 【K】を特徴とするヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システム。

  発注側コンピュータ⇔製造側コンピュータ

   (眼鏡店)     (メーカ)

      眼鏡レンズの供給システム

 この裁判においては、構成要件充足か、2つ以上の主体の関与を前提に、行為者として予定されている者が各行為を行ったか、システムの一部を保有しているかの判断が行われました。

 発明の実施行為が誰かは、構成要件充足の問題とは異なり、支配管理が誰かの判断であるので、この場合は、被告が支配管理していると判断され、差し止め、損害賠償が認められました(支配管理論)。

 ②インターネットナンバー事件 平成20年(ネ)100851号

 インターネットナンバー事件において問題となったクレームは次の通りです。

【A】 インターネットよりなるコンピュータネットワークを介したクライアントからサーバーシステムへの情報ページに対するアクセスを提供する方法であって、

【B】 前記クライアントにおいて記述子を提供する段階と、

【C】 ディレクトリサーバーが、前記記述子を前記ディレクトリサーバーに存在する翻訳データベースを用いてURLにマッピングする段階と、

【D】 前記ディレクトリサーバーが、REDIRECT コマンド中の前記URL を前記クライアントに返送する段階と、

【E】 前記クライアントに前記URL を用いて情報を要求させる段階と、

【F】 前記URL により識別されたページを前記クライアント側で表示する段階と

【G】 を備えた情報ページに対するアクセス方法。

       クライアント⇔サーバ

  アクセスを提供する方法(アクセスする方法)

 構成要件を充足と判断し、複数関与者の充足とは見ずに、サーバ側の単数者で充足と判断されました。

複数主体 IOT特許(外国)

 ①Akamai事件(Akamai Technologies、 Inc. v. Limelight Networks、 Inc. (Fed. Cir. 2015) Nos. 2009-1372、 -1380、 -1416、 -1417)

 Akamai事件において問題となったクレームは次の通りです。

19. A content delivery service、 comprising:

              replicating a set of page objects across a wide area network of content servers managed by a domain other than a content provider domain;

              for a given page normally served from the content provider domain、 tagging the embedded objects of the page so that requests for the page objects resolve to the domain instead of the content provider domain;

              responsive to a request for the given page received at the content provider domain、 serving the given page from the content provider domain; and

              serving at least one embedded object of the given page from a given content server in the domain instead of from the content provider domain.

(コンテンツ配信サービスにおいて、

 コンテンツ・プロバイダのドメイン以外のドメインにより管理されるコンテンツ・サーバの広域ネットワークにおいて1セットのページ・オブジェクトを複製し、

 コンテンツ・プロバイダ・ドメインから通常提供される所定のページのために、ページ・オブジェクトの要求が、上記コンテンツ・プロバイダ・ドメインの代わりの上記ドメインに決定されるように上記ページに埋め込まれたオブジェクトをタグ付けし、

 上記コンテンツ・プロバイダ・ドメインにおいて受信された上記所定のページに対する要求に応答して、上記コンテンツ・プロバイダ・ドメインから上記所定のページを提供し、

 上記コンテンツ・プロバイダ・ドメインからの代わりに、上記ドメインにおける所定のコンテンツ・サーバから上記所定のページに埋め込まれたオブジェクトを少なくとも1つ提供する。)

 ウエブ・コンテンツ配信方法

 limelight社は『タグ付け』以外の全ステップを実施し、

 「タグ付け」はクライアントが実施していました。

 裁判所は、すべてのステップを被告が実施していなくとも第三者の行為に指示を出し、支持者が利益を得ていれば直接侵害と判断しています。

 ②ブラックベリー事件(NTP、 INC.、 v. RESEARCH IN MOTION、 LTD. 2004 U.S. App. LEXIS 25767 (Fed. Cir. 2004))

 ブラックベリー事件において問題となったクレームは次の通りです。

1. A system for transmitting originated information from one of a plurality of originating processors in an electronic mail system to at least one of a plurality of destination processors in the electronic mail system comprising:

              at least one gateway switch in the electronic mail system、 one of the at least one gateway switch receiving the originated information and storing the originated information prior to transmission of the originated information to the at least one of the plurality of destination processors;

              a RF information transmission network for transmitting the originated information to at least one RF receiver which transfers the originated information to the at least one of the plurality of destination processors; 

              at least one interface switch、 one of the at least one interface switch connecting at least one of the at least one gateway switch to the RF information transmission network and transmitting the originated information received from the gateway switch to the RF information transmission network; and wherein the originated information is transmitted to the one interface switch by the one gateway switch in response to an address of the one interface switch added to the originated information at the one of the plurality of originating processors or by the electronic mail system and the originated information is transmitted from the one interface switch to the RF information transmission network with an address of the at least one of the plurality of destination processors to receive the originated information added at the originating processor、 or by either the electronic mail system or the one interface switch; and

              the electronic mail system transmits other originated information from one of the plurality of originating processors in the electronic mail system to at least one of the plurality of destination processors in the electronic mail system through a wireline without transmission using the RF information transmission network.

(1.電子メールシステム中の複数の発信元プロセッサの一つから、電子メールシステム中の複数の発信先プロセッサの少なくとも一つへ、発信される情報を送信するシステムは、以下のものから構成される。

 電子メールシステム中の少なくとも一つのゲートウエイスイッチであって少なくとも一つのゲートウエイスイッチの一つは、発信される情報を複数の発信先プロセッサの少なくとも一つへ送信する前に、発信される情報を受信し、発信される情報を保存し、

 発信される情報を複数の発信先プロセッサの少なくとも一つへ伝達する少なくとも一つのRF 受信機に発信される情報を送信するための、RF 情報送信ネットワーク、

 少なくとも一つのインターフェーススイッチであって、少なくとも一つのインターフェーススイッチの一つは少なくとも一つのゲートウエイスイッチの少なくとも一つをRF 情報送信ネットワークに接続し、ゲートウエイスイッチから受信する発信される情報をRF 情報送信ネットワークに送信し、

 その中で

 複数の発信元プロセッサの一つにおいて発信される情報に付加された一つのインターフェーススイッチのアドレスに反応して、一つのゲートウエイスイッチにより、または電子メールシステムにより、発信される情報が一つのインターフェーススイッチに送信され、発信される情報が一つのインターフェーススイッチから、発信元プロセッサにおいて、または電子メールシステムと一つのインターフェーススイッチのいずれかにより付加された発信される情報を受信する複数の発信先プロセッサの少なくとも一つのアドレスをもつRF 情報送信ネットワークに、送信され、

 電子メールシステムは、RF 情報送信ネットワークを使用する送信ではなく、電子メールシステム中の複数の発信元プロセッサの一つから、電子メールシステム中の複数の発信先プロセッサの少なくとも一つに、有線を使って他の発信される情報を送信する。)

(AIPPI(2006)Vol.51 No.7 RIM対NTP(「BLACKBERRY」)事件の概要と日本法との関連より引用)

  アメリカ          カナダ

  SMTPサーバ、POPサーバ→配信サーバ

           携帯電話←

 「管理と有益な使用」が米国内にある限り、一部が米国外にあってもよいと判断されています。

複数主体 IOT特許 理論構成

 複数主体で発明が実施される場合には、共同直接侵害、道具理論、支配管理、間接侵害などの考えが利用されています。

・共同直接侵害

 複数主体でも、共同遂行の意思があれば、共同で特許を実施するとして、共同の直接侵害者とする考えです。

・道具理論

 一部実施者を道具として利用にすぎないから、全体として実施という考えです。

・支配管理

 支配管理者がだれかにより判断するものです。

・間接侵害

 間接侵害という規定があるのだから、この規定を利用すればいい、という考えです。

「AI・ITO技術の時代にふさわしい特許制度に検討に向けて」およびそれに対する提案募集の結果

 令和元年11月14日に「AI・ITO技術の時代にふさわしい特許制度に検討に向けて」が公表され、令和2年1月24日に「AI・ITO技術の時代にふさわしい特許制度に検討に向けて」に対する提案募集の結果が公表されました。

これらの資料には、
複数の実施主体が関与する場合の検証事例(ユーザ等のアクセスを伴うサービス提供)、
複数の実施主体が関与する場合の検証事例(複数の事業者等が連結した事業)、
特許発明に直接関係しない収益源によるビジネスの場合の検証事例、
AI関連技術に係る権利行使の検証事例、
膨大な数の特許発明を含む製品に対する権利行使の検証事例、
標準必須特許を巡る異業種間交渉の検証事例、
ビジネスの変化等に対応した知財紛争処理システムの検証事例などに言及しており、複数主体の問題に対する対処について有用な情報となっております。

(弁理士 井上 正)

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